« DyDo 『ミウスポーツウォーター ゼロカロリー』 淡い藤色キャップ地で新発売 | トップページ | サッポロ飲料 『Natural Clear Water』 の水色無地汎用キャップ »

2008/03/24

加温器キャップの書体の差異

夜風に沈丁花の香りが混ざり、桜のつぼみもほころぶ頃となって来た。清々しい季節の到来である。にもかかわらず、今回のテーマは、季節はずれにも、加温器キャップの書体の差異についてである。

ポッカコーポレーションにはかなり以前から 『ぽっかぽかレモン』 というネーミングの商品がある。もちろん、オヤジギャグ的センスの地口 (駄洒落) である。今期、私が確認した範囲では、am/pmで販売している350mL (ノーマルタイプ) とスリーエフで販売している280mL (広口タイプ) の2種類が販売されている (2008年3月24日現在)。この商品に限ったことではないが、加温器販売製品にはコンビニエンスストアの会社毎に販売される容器の種類や容量が異なる場合が多い。加温器ケースのサイズの違いから規定されているのかも知れない。

今回対象とするのは、このうち350mLボトルのφ28mm径汎用キャップである。キャップは加温器専用を示すオレンジ色キャップ地に黒色文字のせのものである。図柄は、ポッカコーポレーションの<白抜きP>マークと 「POKKA」 のコーポレートロゴを中央に配し、外周にお馴染みの 「オレンジキャップは加温器販売が出来る製品の目印です。」 のメッセージがぐるりと一周取り巻くスタイルのものである。

因みに、この様に文字が外周を取り巻くレイアウトは、ビール瓶や牛乳瓶などのリターナル瓶を使用していた頃の名残である。リターナル瓶の場合、メーカーや製品ごとに、内容物がその都度入れ替わるため、製造者や販売者、さらには成分の表示までもが王冠やフタに担わされていた。しかしながら、ペットボトルは基本的にはワンウェイが一般的であるため、わざわざこの狭い印刷領域に<メッセージ>を入れる必要などない筈である。やはりこの場所が最も注意を喚起しやすいのであろう。

さて、「オレンジキャップは加温器販売が出来る製品の目印です。」 に使用されている書体であるが、現在手許にあるキャップには、写研の 「ゴナDB (DBNAG)」 が使用されている。ところが、以前の加温器用汎用キャップには、ダイナコムウェア社の 「DF平成ゴシック体W5」 が使用されていたようである。と言うのも、実際に手許に実物がないため、詳細に比較出来ないが、何となく文字の詰まり具合が異なる。今回は比較検討のため、KUMA氏の運用する 『ペットボトルキャップコレクションの旅』 (注1) に収載されているキャップの写真を参照させて頂いた。

書体変更の理由は、何と言っても見た目である。日本語は本来縦書きであったため、活字も縦組み用に設計されていた。従って、横組みにした場合、文字間隔にバラツキが生じることになる。これは、コンピュータが普及して、プロポーショナルフォントと呼ばれる詰め組み用フォントが使用可能となった現在でも、欧文書体のような洗練されたスペーシングやカーニングが望めないことからも明らかである。

そこで1980年代前半に登場したのが、見出し用のフォントであった 「ゴナU」 から発展した 「ゴナファミリー」 (注2) であった。このフォントは、縦組み、横組みともに美しい文字組みを実現するため、「ふところ」を広く取り、文字幅を均等に揃えたことに特徴がある。その後、他の写植機メーカーであるモリサワの 「新ゴ」 (注3) などに多大な影響を与えたとされる画期的な書体である。因みに、「新ゴ」 は1993年3月に写研から 「ゴナ」 のコピーであるとして訴訟を起こされるほど酷似したものであったが、ゴジック体の範疇であるとして、写研の請求は退けられた。ただ、実際にはかなり異なっており、今回も 「オ」 の字が、書体特定の決め手となった程である。「ゴナ」 の 「オ」 には縦棒にハネが存在しない。一方 「新ゴ」 の 「オ」 にはハネが存在する。また、「が」 の濁点や 「プ」 の半濁点の位置が微妙に異なる。こうした特徴を辿ることで、容易に判別可能である。

これに対して、書体変更前に使用されていたダイナコムウェア社のダイナフォント 「DF平成ゴシック体W5」 は、パソコン用フォントとして開発された経緯を持つため、「ゴナ」 や 「新ゴ」 のような写植用フォントに較べ、完成度が今一つである。従って、外周に添って文字組みした場合、字間のバランスが著しく崩れ、全体的に散漫な印象を与えてしまう結果を生じた。現在のキャップはその点を改善したものといえる。

なお、今回の調査の結果、他の飲料メーカーでは、モリサワの 「新ゴ」 の使用率が高いことが判明した。恐らく、オープンフォントとして、WindowsやMacでも使用出来ることが決定的と思われる。何れにしても、使用するフォント (書体) によりキャップの印象は大きく異なる。

■ 商品表示データ ■
『ぽっかぽかレモン』 (6角耐熱PETボトル350mL)
<品名> 清涼飲料水
<原材料名> 砂糖、レモン果汁、還元澱粉糖化物、はちみつ、レモンピール、レモン果皮エキス、酸味料、香料、ビタミンC、マリーゴールド色素、甘味料 (スクラロース)
<栄養成分> (100mLあたり) ●エネルギー:39kcal ●たんぱく質:0g ●脂質:0g ●炭水化物:10.1g ●ナトリウム:63mg ●ビタミンC:24mg
<販売者> 株式会社ポッカコーポレーション (名古屋市中区栄4-2-29)
<JAN> 4-902471-026786

■ 参照キャップデータ ■
『ぽっかぽかレモン』 (6角耐熱PETボトル350mL) の賞味期限+製造所固有記号:「081101/PLL」。賞味期間は約8カ月 (未開栓)。キャップは、NCC社製 「Fin-Lok」 ライナー材使用の2ピースキャップ [ノーマルタイプ] (洗浄スリット4個所) (ロット番号:<本体>30-13、<ライナー材>6-22・・)。ボトルは、吉野工業所製 (ロット番号:44/27)。プリフォーム [白] (ロット番号:4027)

注1) KUMA氏の運営する 『ペットボトルキャップコレクションの旅』 「日本のプラキャップ」 <加温器キャップ編> 「ポッカコーポレーション POKKA ほ~っHOTレモン-01」 を参照のこと
注2) 株式会社写研にはインターネット上のホームページなるものが存在しない。恐らく、フォントメーカーの矜持を貫くためと思われる。従って、フォントを確認したい方は 「ゴナDB」 で検索のこと
注3) 株式会社モリサワ書体見本 新ゴファミリー

« DyDo 『ミウスポーツウォーター ゼロカロリー』 淡い藤色キャップ地で新発売 | トップページ | サッポロ飲料 『Natural Clear Water』 の水色無地汎用キャップ »

コメント

ゴナの衝撃は、今の若いデザイナーに言っても、??って感じです。

DTPは功罪相半ばしますね。

TQYさん こんにちは

>DTPは功罪相半ばしますね。

全く同感です。私は、写研の「Dナール」世代なので、中村征宏氏のタイポグラフィデザインの系譜である「ゴナ」には強い思い入れがあります。従って、頑なにインターネット展開を拒んでいる現在の写研の在り方にも疑問を抱いております。その点、いち早くインタネット上でMacとのコラボレートによりオープンフォント路線を確立したモリサワに一日の長があるように思います。とは言え、「ナール」に対する「じゅん」、「ゴナ」に対する「新ゴ」という常にフォロワーとしてのポジショニングとその設計哲学のあり様には、やはり幾ばくかの疑義が残ります。

強いて言えば、モリサワの今日的評価は、デザイン領域において、DTPによる大衆化の途を切り開いた功績と、DTPによる写植フォント本来の持つクオリティー無視の風潮の助長という功罪の両義性を持つように思えます。これは、デザインのあらゆるシーンについて言えることで、商店街の建築における「看板建築」が店舗用テントやアルミサッシに取って変わった状況や、あるいは、日本酒ラベルの「髭文字」が、モダンと称する現代書家風の書体に取って変わろうとしている状況と似ています。

はたしてそこに普遍的な「美」はあるのかと問いたい気分です。職人と素人との間には、超克しがたい断絶があることを知るべきです。

OJ拝

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192015/40627248

この記事へのトラックバック一覧です: 加温器キャップの書体の差異:

« DyDo 『ミウスポーツウォーター ゼロカロリー』 淡い藤色キャップ地で新発売 | トップページ | サッポロ飲料 『Natural Clear Water』 の水色無地汎用キャップ »

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ