« 加温器キャップにおける日本コカ・コーラ社の決断 (1) 白と黒の謎 | トップページ | チェリオジャパン 『ライフガード(R)』 キャップに第4の図柄登場 »

2010/12/31

加温器キャップにおける日本コカ・コーラ社の決断 (2) 過渡期キャップの導入

2010年、日本コカ・コーラ社は、加温器キャップに新たな歴史を刻もうとしている。それは、飲料キャップにとってエポックメイキング的な出来事である。私たちはまだその全貌を知らない。

今回は前回の続編である。日本コカ・コーラ社が加温器キャップにおいて試験的に行った次世代キャップへの布石について言及したい。

日本コカ・コーラ社は、2010年秋冬のホット飲料において、今後の飲料メーカーの方向性を決定するかも知れない重大な決断を行っていた。それは、当ブログでもこれまで折に触れ言及して来た次世代ローハイトキャップの口栓部規格に関するものである。

次世代ローハイトキャップとは、国際飲料技術者協会 (ISBT) PCO-1881小委員会が、2006年頃より策定作業を進めて来た環境負荷軽減を目的とした 「PCO-1881規格」 のことである [注1]。既に、Bericap社やCSI社などのキャップ製造に係るグローバルメーカーが製品化し、メキシコ (中南米)、欧州、米国、中国など世界各地域で市場投入され、実際に使用されている。

本邦においても、2009年末から2010年の導入を視野に入れ、CSIジャパン社や日本クラウンコルク (NCC) 社などが、2009年度までに開発を完了し、市場投入に向けた準備に入っていた。具体的には、CSI社における 「Xtra-Lok mini」、「Omni-Lok mini」[注2-3]、更に、NCC社における炭酸充填用2ピースキャップである 「28NCフラップSH-AP3T」 や炭酸充填用ワンピースキャップである 「28NCフラップSH-T」 などを挙げることが出来る [注4]。

ただし、これらのキャップが2010年12月31日現在、コンビニの陳列棚に並んだという報告を未だ聞かない。

本邦において現在最も多く使用されている飲料キャップは、φ28mm径の 「PCO-1810」 (一部 「ALCOA-1716」 を含む) と呼ばれる口栓部規格 (neck finish specification) に対応したものである。当然のことながら、国内の清涼飲料水を製造するメーカーは、その大部分がこの口栓部規格に対応する製造ラインとして稼動している。これらの口栓部規格は、約四半世紀前にPETボトルが飲料容器として導入された当初より、アルミキャップの時代を経て、プラスチックキャップの時代の到来以降、現在に至るまで、大幅な変更も無く使用され続けて来た馴染み深い仕様であった。従って、新規ローハイト (ショートハイト) キャップへの移行は、「黒船来航」 にも似たインパクトを業界全体に与えるものである。

現実に、ローハイトキャップへの移行 (仕様変更) には、多額の設備投資を要することになる。またそのためには、飲料業界全体のコンセンサス形成も不可欠である。しかしながら、リーマンショック以降の景気低迷と原油価格の高騰などによる不安定要因により、飲料業界全体が低迷期にある現状において、新規設備投資は、環境負荷以上に企業経営に負担を強いるものである。そうした状況においては、なかなか新規口栓部規格に切り替えられないのが実情と言える。

こうした閉塞的状況を打破すべく、業界のリーディングカンパニーたる日本コカ・コーラ社は、加温器キャップにおいて 「過渡期キャップ」 の採用に踏み切った。すなわち、「PCO-1810」 と 「PCO-1881-ISBT」 とを橋渡し、仲介 (mediate) する役目を果たす 「PCO-1881-med」 規格の導入である。

さて、ここまでの説明ではさっぱりキャップの形状が具現化されていないため、ほとんどの読者が脱落し、振るい落とされたと思われる。正直、書いている私自身しんどい。でも、いま暫くの辛抱である。


表.新旧口栓部規格の主要仕様 [注5-6]

(a) PCO-1810 (従来規格)
   A = 27.97 ± 0.13 mm
   P =  3.18 ± 0.10 mm
   X = 21.00 ± 0.25 mm
   S =  1.70 ± 0.08 mm
   Z = 33.00 ± 0.38 mm
   Wt* = 5.1 g
   スレッド巻数[角度]= 約2.3 [=840°]

(b) PCO-1881-med (過渡期規格)
   A = 28.00 ± 0.15 mm
   P =  2.70 mm
   X = 21.00 ± 0.25 mm
   S =  1.70 ± 0.08 mm
   Z = 33.00 ± 0.15 mm
   Wt* = 3.9 g
   スレッド巻数[角度]= 約1.6 [=580°]

(c) PCO-1881-ISBT (新規規格)
   A = 28.00 ± 0.15 mm
   P =  2.70 mm
   X = 17.00 ± 0.25 mm
   S =  1.70 ± 0.08 mm
   Z = 33.00 ± 0.15 mm
   Wt* = 3.8 g
   スレッド巻数[角度]= 約1.75 [=650°]

[注解] A=周状顎部 [TEバンド嵌合部突起] 直径 (= キャップ内径)、P=スレッドピッチ、X=口栓部上端からサポートリング下端までの長さ (口栓部全体の高さ)、Z=サポートリングの直径、Wt=重量 [* データは注5に由来]。なお、実際の数値やスレッドの形状は、プリフォーム製造メーカー及びキャップの改良仕様により若干異なることに留意。


上記の表から明らかなように、従来規格 「PCO-1810」 と新規規格 「PCO-1881」 の絶対的違いは、スレッド (ネジ山) のピッチ幅の違いにある。実際に各々の規格に対応するキャップを入れ替えた場合、「PCO-1810」 対応キャップでは、キャップ側のピッチ幅が大きいため、一見再栓されたように見えるが、水を入れて振るとわずかに漏出が認められる。逆に、「PCO-1881-med」 対応キャップでは、キャップ側ピッチ幅が小さいため、約半分位までしか閉まらない。結果として、これらのキャップに互換性がないことが証明された。

ただし、従来規格 「PCO-1810」 と過渡期規格 「PCO-1881-med」 との違いは、あくまでネジ山のピッチ幅のみであり、口栓部全体の長さ (高さ) は両方とも21mmと同じであることから、従来の設備をそのまま使用出来るメリットがある。すなわち、ボトル口栓部とキャップの規格の対応関係さえ、ちゃんと取れていれば良いことになる。

実は、キャップの刷り色を 「白」 と 「黒」 に分けた最大の理由はここにあったようにも思える。

なお、実際に過渡期規格である (b) の 「PCO-1881-med」 に対応する製品は、口栓部が透明で、キャップが 「白刷り」 の 『紅茶花伝 ロイヤルミルクティー』 (110318-EEB) と 『あたたかい綾鷹上煎茶』 (110513-CTK) の2製品のみであった。キャップの見分け方は簡単で、キャップ裏側に刻印されたロット番号の上段が 「A30」 番台で始まるものが、これに対応する。因みに、これはコールド販売製品である 『い・ろ・は・す』 や 『綾鷹』 などに近年導入されているNCC社製軽量化キャップ 「28NCフラップ-アセプE」 (PCO-1810) におけるロット番号 「A40」 番台のものとは明確に区別されるべきものである (これらのキャップは樹脂の肉厚が薄いため、内側スレッドをナール幅5本置きに等間隔に切り取った跡が外観上、縦縞状に透けて見えることで判別し得る)。

上記以外の 「白刷り」 キャップは従来規格の 「PCO-1810」 のままである。現在、「PCO-1881-med」 を市場で見掛ける機会はほとんどないが、市場投入のタイミングは断続的と考えられる。このことからも、過渡期キャップの導入が試験的であることが伺える。

国際飲料技術者協会 (ISBT) は、2010年9月17日付けプレスリリースの中で、持続可能な開発と環境負荷の軽減に向けた社会の実現のため、「PCO-1881」 規格を全世界に完全無償で提供することを表明している [注7]。本来、業界内の自主規格は参加企業内で排他的に使用されるか、法外な対価で提供されるものであるが、今回のこの方針は、当該規格の普及が業界の思惑とは裏腹に、思うように進んでいないことの左証とも言える。

果たして、新規ローハイトキャップが本邦で普及するのは、何年後のことであろうか。その普及率は、取りも直さず、景気回復の判断指標と呼ぶにふさわしい。

来るべき2011年が良い年でありますように!

■ 参照キャップデータ ■
『あたたかい綾鷹(R)<上煎茶>』 <粗ギザ黒文字バージョン> (6角耐熱PETボトル280mL) の賞味期限+製造所固有記号:「110610-CTK」*。賞味期間は約8カ月 (未開栓)。キャップは、NCC社製 「28NCフラップ-アセプ」 ワンピースキャップ [粗ギザタイプ] (ロット番号:N21-71)。ボトルは、自社成形 (ロット番号:CJP/C/11R)。プリフォーム [白色] (ロット番号:NT112029)。製造ロット番号: H0226K22 534367

『あたたかい綾鷹(R)<上煎茶>』 <粗ギザ白文字バージョン> (6角耐圧PETボトル280mL) の賞味期限+製造所固有記号:「110313-CTK」*。賞味期間は約8カ月 (未開栓)。キャップは、NCC社製 「28NCフラップ-アセプ」 ワンピースキャップ [粗ギザタイプ] (ロット番号:A30 68)。ボトルは、自社成形 (ロット番号:CJP/C/5R)。プリフォーム [透明] (ロット番号:NI43137)。製造ロット番号: F0656J22 288914

『紅茶花伝(R)ロイヤルミルクティー』 <粗ギザ白文字バージョン> (6角耐圧PETボトル280mL) の賞味期限+製造所固有記号:「110318-EEB」**。賞味期間は約6カ月 (未開栓)。キャップは、NCC社製 「28NCフラップ-アセプ」 ワンピースキャップ [粗ギザタイプ] (ロット番号:A30 04)。ボトルは、自社成形 (ロット番号:EJP/E/13R)。プリフォーム [透明] (ロット番号:NI43674)。製造ロット番号: G0656J27 447613

* 「CTK」 = コカ・コーラセントラルジャパン (株) 東海北工場 (愛知県東海市南柴田町トの割266-18)
** 「EEB」 = コカ・コーライーストジャパンプロダクツ (株) 海老名工場 (神奈川県海老名市上河内33)

注1) 「International Society of Beverage Technologists, PCO-1881 Finish Subcommittee」 (Webサイト)
注2) Closure Systems International (CSI) 「Xtra-Lok mini」 [アクセス日: 2010年12月31日]
注3) Closure Systems International (CSI) 「Omni-Lok mini」 [アクセス日: 2010年12月31日]
注4) 日本クラウンコルク株式会社 『環境・社会報告書 (2010年版)』、p. 11, 2010.
注5) Anton Steeman 「Short, Shorter, the ShortestBest In Packaging (2009/11/04)
注6) ISBT 「Thredspecs-Downloads」 [アクセス日: 2010年12月31日]
注7) 「ISBT Announces Global Open Domain Initiative」 (2010/09/17)

« 加温器キャップにおける日本コカ・コーラ社の決断 (1) 白と黒の謎 | トップページ | チェリオジャパン 『ライフガード(R)』 キャップに第4の図柄登場 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 加温器キャップにおける日本コカ・コーラ社の決断 (1) 白と黒の謎 | トップページ | チェリオジャパン 『ライフガード(R)』 キャップに第4の図柄登場 »

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ