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2015/12/31

2015年秋冬加温器キャップにおける 「KIRIN」 ロゴミステリー

年の瀬である。大つごもり。体力の衰えと視力低下のため、ブログの更新もままならない一年であった。ただし、JT社の飲料部門からの撤退などもあり、飲料業界の寡占化が一層進んだ年でもあった。最近、魂を揺さぶるようなキャップとの出会いが少なくなっていることも、更新頻度低下の一因かも知れない。などと、一人ごちていても埒が明かないので、最近遭遇した未解決事例について考察したい。

キリンビバレッジ社は今年も、秋冬の季節商品として、2015年9月8日 (火)、ホット飲料各種を同時リニューアル発売した [注1]。それ以外にも、ファミリーマートやサークルKサンクスの限定販売品を加えると、両手の指でも足りないほどの点数のラインナップをブロックバスター的に投入している。その意気込みの凄さが感じられる。

特徴として、口栓部が透明なアセプティック充填のコンビニ店頭販売向け345mL入りのシェーカー型ボトル (10品目) と、口栓部が白色 (結晶化) 処理のホット充填の自販機向け280mL入り六角パネルボトル (6品目) とに大別し得る。なお、『午後の紅茶 あたたかい ミルクティー』 (280mL入り六角パネルボトル) は内容物の性格上、例外的に口栓部が透明なアセプティック充填商品である。すなわち、粗ギザ (11品目)、ノーマルギザ (5品目) である。


表.キリンビバレッジ社2015年秋冬加温器販売製品一覧 (PETボトルに限定)

● 345mL入りシェーカー型ボトル製品 [アセプ充填]

< 「午後の紅茶」 ブランド>
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい ストレートティー』
   発売日: 2015/09/08 (火)
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい レモンティー』
   発売日: 2015/09/08 (火)
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい ミルクティー』
   発売日: 2015/09/08 (火)
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい おいしい無糖』
   発売日: 2015/09/08 (火)
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい チャイ・ティーラッテ』
   発売日: 2015/11/25 (水)
   ファミリーマート限定
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい アップルティー』
   発売日: 2015/11/03 (火)
   サークルKサンクス共同開発
< 「生茶」 ブランド>
 ▼ 『[KIRIN Plus-i] ほっと 食事の生茶』
   発売日: 2015/11/10 (火)
< 「世界のKitchinから」 ブランド>
 ▼ 『世界のKitchinから 薫るホット葡萄』[注2]
   発売日: 2015/10/27 (火)
< 「小岩井」 ブランド>
 ▼ 『小岩井 あたたかい ミルクとココア』
   発売日: 2015/09/08 (火)
 ▼ 『小岩井 あたたかい ミルクとコーヒー』
   発売日: 2015/09/08 (火)

● 280mL入り六角パネル製品 [ホット充填]

< 「午後の紅茶」 ブランド>
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい ストレートティー』
   発売日: 2015/09/08 (火)
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい レモンティー』
   発売日: 2015/09/08 (火)
< 「生茶」 ブランド>
 ▼ 『キリン ほっと仕立て生茶』
   発売日: 2015/09/08 (火)
< 「小岩井」 ブランド>
 ▼ 『小岩井 ホットレモン』
   発売日: 2015/09/08 (火)
< 「トロピカーナ」 ブランド>
 ▼ 『Tropicana(R) ホットオレンジ』
   発売日: 2015/10/06 (火)
   キリン・トロピカーナ社製品

● 280mL入り六角パネル製品 [アセプ充填]

< 「午後の紅茶」 ブランド>
 ▼ 『午後の紅茶 あたたかい ミルクティー』
   発売日: 2015/09/08 (火)


ここ数年来、ホット飲料にもアセプ充填化の波が押し寄せている。結果的に、キャップにもこの充填方法に対応する粗ギザキャップの使用が目立ようになって来た。当然、ノーマルギザから粗ギザへの大転換期においては、オレンジキャップが粗ギザである場合、最大限の注意を払う必要が生じる。

因みに、粗ギザキャップは、シェーカー型の345mL入りPETボトルにほぼ限られる。「シェーカー型」 と取敢えず書いてみたが、私はこのボトルの形状を 「オードムーゲあります」 型と密かに呼んでいる。また、このボトルはグリップ性能にも優れており、ハンドウォーマーとして最適なフォルムに仕上がっている。

このボトルの特徴は、ボトルの底部がペタロイド型のくぼみを有し、深絞りになっていること、またスレッド (ネジ山) の巻き数がPCO-1810規格と較べ30%減となっていることにある。なお、このボトルとペアとなるキャップは、2010年末~2011年掛けて登場した特殊口栓部規格対応の軽量化加温器キャップである。現在、NCC社製 「28NCフラップアセプ-MA」 とCSI社製 「AS-Lok AM」 が対応キャップとして供給されている。

改めて、キリンビバレッジ社の粗ギザオレンジキャップを見比べてみよう。勘の鋭い読者の方は既にお気付きのことと思うが、NCC社製とCSI社製の両社のキャップが使用されており、これらのキャップの間には当然の如く差異が認められる。先ず、一目でNCC社の方がCSI社に較べ、刷り色が明るいことが分かる。浮かび上がる明るい赤に対して、沈み込む落ち着いた赤といった印象である。次いで、「KIRIN」 のコーポレートロゴの幅が、NCC社が24.5mmであるのに対して、CSI社の方が24.0mmと約0.5mmほど小さい。

これだけの違いならば、単なるキャップ製造メーカー間の印刷上の問題と言うことになり、コレクションの対象とするかどうかの判断は、コレクター諸氏に委ねられるべきものだが、よくよく観察してみると、ある違和感に襲われる。それは、一瞬、ゲシュタルト崩壊が起こるほどの、文字間隔の差に帰着するものであった。驚くべきことに、使用フォントが異なっていたのである。

実は、「KIRIN」 のコーポレートロゴには新旧の違いがある。このことは、著名なデザイナーである中西元男氏のブログにおいて明かされている事実である [注3]。私も、そのことを1~2年前にあるコレクターの方からご教示頂いていたが、既に較べるべき旧ロゴキャップが市場から一掃されていたことで、時宜を失い、ブログ記事にまとめ切れずにいた。ところが、今回、加温器キャップの中に幻の旧ロゴを発見し、大いに驚き、困惑している。

その旧ロゴは、CSI社製キャップのみに存在する。因みに、CSI社製キャップの見分け方は、外観上、キャップの角にピンホールが穿たれておらず、代わりにスカート部に60本あるギザギザの内の1本だけ短いことが目印となる。あるいは、幾つかある製造所固有記号の内、「/MF」 とTEバンドに印字されたものがそれである。なお、開栓後であれば、キャップの裏に 「CSI」 と刻印されたレリーフロゴにより明確に判別出来る。

加温器キャップでは、「この商品は加温器で販売できる商品です。」 の小売店向けメッセージがキャップ辺縁部周囲をぐるりと囲むため、ロゴのサイズが縮小されることで、視認性が悪く、判読し難い。ただし、両者 (両社) を注意深く比較すれば、2番目の 「I」 と4番目の 「I」 の後のスペーシングの広い方が、旧ロゴで、狭い方が新ロゴであることが分かる。また決定的な特徴として、1番目の 「K」 の2画目のセリフの張り出し方に顕著に表れており、張り出している方が、旧ロゴである。

因みに、この張り出しは、旧ロゴで使用された既存フォントの 「Friz Quadrata Bold」 に由来するものである。この 「Friz Quadrata Bold」 と呼ばれる欧文フォントは、先ず、1965年、スイス人フォントデザイナーであるアーネスト・フリッツ (Ernst Friz) によりオリジナルウェートの 「Friz Quadrata」 が発表された後、1978年、ビクター・カルーソ (Victor Caruso) により、フォントファミリーにボールドウェートが追加され、最終的に1985年に完成する。この 「Bold」 版の出現により、一挙に 「Friz Quadrata」 フォントは人気を博すことになる [注4]。

因みに、1985年~2014年までの長期間にわたり使用され続けていた 「NESCAFE(R)」 の旧ロゴも、<Quadrata>系フォントに基ずく改良ロゴの一つである。スイスに本拠地を置くネスレ社としては、スイスで開発されたこのフォントを使用することに何の躊躇もなかった筈である。まさに郷土愛である。

キリンも、1988年、このフォントを基にデザインされたコーポレートロゴの使用に踏み切った [注3,5]。それまで使用されていたシンプルなサンセリフ書体に較べ、カリグラフィック的要素を色濃く反映したこのフォントは、ロゴに風格や格式を与えるものであった。

その後、2006年11月、キリンホールディングス社のCI戦略の一環として、上記ロゴのリデザイン、リブランディングが実施され、現在に至っている [注6]。リデザインにより、「Friz Quadrata Bold」 書体に特徴的な三角形 (▲) のセリフが、滑らかな曲線に置き換えられ、よりソフィスティケートされた印象を与えるロゴに変身した [注3,7]。

キリンビバレッジ製品における<Quadrata>系フォントの使用例としては、コーヒー飲料の 「FIRE」 ブランド、アイソトニック飲料の 『KIRIN LOVES SPORTS (キリン ラブズ・スポーツ)』 を挙げることが出来る 「注8-9」。

「KIRIN」 のコーポレートロゴは、実に不思議な造形をしている。ロゴを回転させていくと、「NRIDI」 となる一瞬が存在する。すなわち、擬似的な点対称性を維持しつつ、変化にも富んでいる。縦棒の多さを逆手に取ったデザインと言える。従って、キリンビバレッジ社の汎用キャップには、あの無粋な開栓方向指示矢印が存在しない。擬似的な点対称性がそれを補完して余りあるからである。ビバ! キリンビバレッジ!

ところで、旧ロゴが何故再登板となったのか。その理由は不明である。その謎はそっと謎のままにしておきたい。何故ならば、コレクション対象キャップの種類が今後も増えるかも知れないからである。

■ 商品表示データ ■
(a)『午後の紅茶 あたたかい ストレートティー』 (345mLオリジナルシェイプ [シェイカー型] PETボトル)
<名称> 紅茶飲料
<原材料名> 砂糖、紅茶(ディンブラ100%)、香料、ビタミンC
<栄養成分> (製品100mL当たり) ●エネルギー:16kcal ●たんぱく質:0g ●脂質:0g ●炭水化物:4g ●ナトリウム:6mg
<製造者> キリンビバレッジ株式会社 (東京都千代田区神田和泉町1番地)
<JAN> 49-09411-06583-6

(b)『午後の紅茶 あたたかい ストレートティー』 (345mLオリジナルシェイプ [シェイカー型] PETボトル)[ディズニーデザインラベル (「tumutumu」 バージョン)]
<名称> 紅茶飲料
<原材料名> 砂糖、紅茶(ディンブラ100%)、香料、ビタミンC
<栄養成分> (製品100mL当たり) ●エネルギー:16kcal ●たんぱく質:0g ●脂質:0g ●炭水化物:4g ●ナトリウム:6mg
<販売者> キリンビバレッジ株式会社 (東京都千代田区神田和泉町1番地)
<JAN> 49-09411-06583-6

■ 参照キャップデータ ■
(a)『午後の紅茶 あたたかい ストレートティー』 (345mL八角形パネルオリジナルシェイプ [シェイカー型] PETボトル) の賞味期限+製造所固有記号: 「2016. 6. 6/K.」 *。賞味期限は9カ月 (未開栓)。キャップは、NCC社製 「28NCフラップアセプ-MA」 ワンピースキャップ (粗ギザ) (ロット番号:A33 69)。ボトルは自社 (KBC) 成形 (ロット番号:S/03)。プリフォーム [透明/PCO1881(過渡期タイプ)] (ロット番号:D65-82)。製造ロット番号: I11R05K

(b)『午後の紅茶 あたたかい ストレートティー』 (345mL八角形パネルオリジナルシェイプ [シェイカー型] PETボトル) の賞味期限+製造所固有記号: 「2016. 8.16/MF」 **。賞味期限は9カ月 (未開栓)。キャップは、CSI社製 「AS-Lok AM」 ワンピースキャップ (粗ギザ) (ロット番号:M2 29)。ボトルは自社 (KBC) 成形 (ロット番号:??/25)。プリフォーム [透明/PCO1881(過渡期タイプ)] (ロット番号:NT15028)。製造ロット番号: 1517A

<自社工場>
* K. = キリンビバレッジ株式会社 滋賀工場 (522-0342 滋賀県犬上郡多賀町敏満寺1600)
 S = キリンビバレッジ株式会社 湘南工場 (253-0101 神奈川県高座郡寒川町倉見1620)
<委託協力工場>
** MF = 丸善食品工業株式会社 富士小山工場 (410-1312 静岡県駿東郡小山町菅沼884-1)
 CA = 株式会社日本キャンパック 赤城工場(371-0202 群馬県前橋市室沢1171)
 CK = コープ果汁株式会社 第一工場 (286-0215 千葉県富里市立沢新田172-1)[推定]
 CL = コープ果汁株式会社 第二工場 (286-0215 千葉県富里市立沢新田172-1)[推定]

注1) 「~今年もホット飲料のラインアップを充実~ 「キリン 午後の紅茶」 「キリン 生茶」 「小岩井」 ブランドからホット商品発売」 キリンビバレッジ ニュースリリース (2015/08/11)
注2) 「世界のKitchinから」 (ブランドサイト)[アクセス日:2015年12月16日]
注3) 「キリン、サントリー、地ビール・・・事業開発物語」 『中西元男実験人生』 (2010/07/07)
注4) 「Friz Quadrata Bold」 Identifont [アクセス日:2015年12月31日]
注5) キリン株式会社 「KIRIN (旧ロゴ)、商標登録第2048648号 (1988/05/26)」
注6) 「グループ経営理念体系およびグループ各社CIロゴ」 キリンホールディングス プレスリリース (2006/11/01)
注7) キリン株式会社 「KIRIN (新ロゴ)、商標登録第5089006号(2007/11/02)」
注8) キリン株式会社 「FIREロゴ、商標登録第4794737号(2004/08/13)」
注9) キリンビバレッジ 「すばやくスポーツモードに導く KIRIN LOVES SPORTS (キリン ラブズ スポーツ)」 (ブランドサイト) [アクセス日:2015年12月31日]

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